「病気の児童生徒への特別支援教育支援冊子 病気の子どもの理解のために」

知人より「病気の児童生徒への特別支援教育支援冊子 病気の子どもの理解のために」という一般の小中高校教員向けのガイドブックを多くの方々に紹介して欲しいとのメールをいただいた。

知人に許可を得て、一部を転載し紹介する。


本文中にもあるが、この本の全文がダウンロードできるHPはこちら。

 いま、通常学校の普通学級の子どもたちの2割弱が、何らかの病気を抱えながら教育を受けています。しかし、学校や先生、友達が病気に理解を示さず、いじめられたり、「気持ち悪い」といわれて仲間はずれにされたりして、不登校になったり、病気を隠しながら通学していたりするケースが山ほど報告されています。また、新しい種類の病気が年々増え、不登校だった子どもが実は身体的な病気だった、学校も家族もだれも気が付かなかった、病院へ連れて行ったらすぐに不登校が改善された、というようなケースもあります。


 もうひとつ、「心の病」にかかる子どもたちが年々増加しています。これは心身症などという生易しいものではなく、うつ病強迫神経症統合失調症といった大人の精神疾患を思わせるような病名の子どもたちが増加する一方です。しかも、このような「心の病」への偏見から家族が子どもの病気を隠したり、学校の教員さえも偏見の眼で見たり、あるいは「心の病」に周囲の大人がだれも気が付かず症状を悪化させていき自殺に至る、といったようなケースもあります。


 「心の病」は明らかに「病気」であり、特別支援教育の対象になります。しかし、そのような意識は特別支援教育に携わっているものですら薄く、文部科学省でも頭を痛めているところです。まず現場の先生にこの状況を知らせ、対応を改めてもらおうと、関係者でガイドブックの作成を進めました。とりあえず3000部作成し、都道府県教委、特別支援教育関係者に配布しています。


 ただ、この種のガイドブックは下手をすると、ただ送りつけるだけでは職員室でほこりをかぶることが多く、これを活用してもらうために、本の全文をHPにアップし、どこからでもだれでもがダウンロードできるようになっています。病気の子どもの担任の先生が悩んだときにすぐ使えるようになっています。


 監修は文部科学省になっています。もしよければ名川先生のHPやMLなどで紹介してもらえれば助かるのですが。小中学生の自殺の問題などは、ほとんどが児童うつ病という新しい概念の病気だったのでは、という見方も出てきています。これを周囲の大人が早めに見つけ、早めに医療機関につなげれば自殺を防げるようになります。統合失調症なども、発症時期はほとんどが中高生の頃で、周囲が気が付かない間に病気になっていて、どんどん悪化してしまうようです。いまは統合失調症も早期発見、早期治療すれば完治することもあるようです。


 ご存知のように厚労省では日本の精神科病院への入院率やその期間の長さが先進国の中でもずば抜けて高いことへの危機感や、医療費削減の意図も含め、長期入院を解消する動きを進めています。今後、精神疾患の方々も地域で生活する時代になるでしょうが、それよりも先に偏見への対処をしていかないといけないし、同時に精神疾患にならないような方法も学校でしっかり考えていかないといけません。**県のある高校では製薬会社の協力を得て、統合失調症への正しい理解の仕方を授業で教え、自分の心の様子も省みるよう指導したところ、何人かの生徒から「私は病気かもしれない」と訴えがあり、診察したところ「心の病」であることが分かり、治療して快方に向かっている、という例があります。


 学校教育と医療とのかかわりが広がることを私たちは望み、動きを進めています。いまは気が付く人が少ない「病気の子ども」の苦しみ、悩みを取り除いてあげることができれば、と考えています。


この本の全文がダウンロードできるHPは以下の通りです。
http://www.nise.go.jp/portal/elearn/shiryou/byoujyaku/supportbooklet.html



 どこのだれでもがこのHPを基にし、さらに冊子として製本することもできます。また、いまはこの本で紹介している病気の種類はまだ1種類(白血病)だけですが、今後ウェブ上に病気の種類を増やし、地域の学校がどんな病気の子どもの支援でもできるようにしていきたいと思います。


 日本中の先生方が、病気の子どもを担任したときにこのHPを見てもらえるよう、また、不登校などの子を持つ担任がこの本を見て、ひょっとしたら「心の病」ではないか、と考え医療との連携を考えてくれるようになれば、多くの子どもの心と健康、命が守られます。ぜひご協力いただければ幸いです。よろしくお願いします。