「サマーウォーズ」予習としての「ぼくらのウォーゲーム」

サマーウォーズ」を週末に見ようと予定し、予習などしている。*1


細田守監督の出世作とされている「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム」のDVD版を持っていたので、棚から引っ張り出してきて見直し。一緒に見に行く予定の子どもにも、こんなのあるけど、どう、と渡す。
時をかける少女」は今さら見直す必要もないくらい見てるから、こっちはまあいい。未だに終盤の坂を駆け下りていくあたりからの一連のシーンは、キてしまうなあ。


ほか、監督作である「ONE PIECE オマツリ男爵と秘密の島」は見ていない。気がする。
おジャ魔女どれみドッカ〜ン」の第40話、第49話は、彼の演出とは知らず見ていた。衆目の認めるとおりこれらは綺麗だし良くできていると思うのだが、どこが彼の特徴であるのかはよく分かっていない。第40話の“分かれ道”演出などはわかりやすいのだけど*2。また、ガラスのメタファーや若干大人めのつくりなども印象的ではある。*3,*4
あ、そういう知っている知っていないという話はどうでもいい。戻る。*5


で、「ぼくらのウォーゲーム」。
子どもが「あ〜、けっこう覚えてるなあ」とディスプレイの前に居座る。劇場で一緒に見たんだよこれ、と言われ、そういえばそうだった気がする。デジヴァイスも買わされたしね。


当然と言えば当然だが、バーチャル世界の描き方がOZと似ている。
白を基調とした、果ての分からない広がり方。球体空間と呼ぶらしい。アバターは空間を自由に動く。ただし「ぼくらのウォーゲーム」ではアバターは居ない。デジモンなどが主人公たちと連携して活動し、そしてネット接続が切れると動けなくなる。
時間を表す際にデジタル時計で示すのもこの頃からだ。というか、「時かけ」で象徴的に使われているときから気になっていた。


ぼくらのウォーゲーム」では闘うのはもっぱら子どもたちだった。八神太一たち“選ばれし子どもたち”のうち4名がデジモンと組んでバーチャル(デジタルワールド)に入る。大人たちはそのことを何も知らない。でも知らないながらに彼らの奮闘を支え、親身になって助ける。悪い大人が出てこないのも、細田氏の世界なのだろうか。
世界の危機をネットを通じて固唾をのんで見守るのは、やはり世界の子どもたち。最後の決着に図らずも手を貸すのも子どもたち。ネットつながりなんだから大人が混ざっていてもよさそうなものだが、たぶん光子郎のネットつながりということなのだろうと理解しておく。

いっぽう、「サマーウォーズ」では子どもの活躍とともに大人も奮闘するのでしょう? それがテーマの中心らしいから。「ぼくらのウォーゲーム」でも大人はそれなりに協力的だったのだが、今度はしっかりと手を結ぶのですね。どう描かれるのか、どこまで描くのかな。


なお、「ぼくらのウォーゲーム」ではほかの“選ばれし子どもたち”も少しだけ出てくるが、闘わない。太刀川ミミと城戸丈に至っては、他の大人と同様にまったく知らないでハワイで遊んだり受験にいそしんだりしている様子が挟み込まれる。
武之内空については、太一との絡みがサイドストーリーとしてずっと進行して視聴者を少しだけやきもきさせる。終盤、空がメール受信するところと大きな水しぶきが飛ぶシーンの重なりが、何ともすごい対比的構図。このスローに廻るシーンが、本作の爽快感の頂点!になる。そしてラストシーン(じゃなくてエンドロールっていうんですか)の彼女のカットまで、行き届いていると思う。*6


ラストではオメガモンが登場する。このオメガモンのパワーが強すぎてあっさりと蹴散らすのはいただけないのだが、しかし敵もそう簡単にやられないので、少し感じた不満は帳消しとできる。この辺は物語の作り方の特徴なのかなと思う。
そういえばTVシリーズのラストも、ネットワークの特徴を駆使して印象的だったのを思い出した。これは有名だからネタバレにはならない? TVシリーズ「デジモンアドベンチャー02」でもやはり世界の子どもたちが協力し合う。SETIみたいな分散処理コンピューティングによる解法を使う。世界中の選ばれし子どもたちが、それぞれのデジヴァイスの力を結集させる。
サマーウォーズ」では、大人も人脈を駆使して闘うらしいのだが、どうやってエンディングに導くのだろうか。


ぼくらのウォーゲーム」でも島根の田舎を描いている。えーと、今度の「サマーウォーズ」の田舎は、あ、長野か。
家族にしても田舎にしても、たぶん描き方がそれなりにしつこく丁寧になっているんだろうなと推測している。私はまだポスターやネット上に紹介されている5分版しか見ていないから、楽しみ。*7


サマーウォーズ」 本編オープニング(5分バージョン)


当たり前なのであまり書かなかったのだけれど、インフラ事情がぜんぜん違うのも興味深い比較だ。「ぼくらのウォーゲーム」では電話につないでISDNとか何とか言っている。これが2000年の作品というのも考えさせられる。9年の差違をすごいと思うか、それともあまり変わってないじゃんと見るか。


最後にどうでも良いことだが、「ぼくらのウォーゲーム」DVD版おまけの監督インタビューに出てくる細田氏がやはり若い。ヒゲ生えてない。まだこの後でハウル時かけに取り組むとは考えていたのか、いなかったのか。


【追記】
見てきた感想をこちらに書き加えた。(2009-08-09)


時をかける少女 通常版 [DVD]

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*1:あの、原稿も書きますから。遅れてすいません。こういうの見てるから遅れているんじゃありません。

*2:三叉路がストーリーに絡むということ。細田氏はときどき入れるらしい。ドッカ〜ン第40話では主人公どれみがいつもとは違う路に歩いていくことで、佐倉未来と遇う。時かけでは、主人公たちのストーリーを分ける。

*3:ドッカ〜ン第40話でどれみが遇った佐倉未来は、ガラス職人だった。どれみもグラスづくりを体験し、ガラスを巡る話をする。ガラスが非晶体でじつはゆっくりと動いてるんだよ、とか(このエピソードの意味はネタバレになるので書けない)。また場面各所に現れるガラス窓やガラス製品がとても綺麗に描かれていて必見。なお、佐倉未来のCVは原田知世

*4:若干大人めという点について。もともとドッカ〜ンの終盤は先々代の女王様エピソードの進行が重要だから、他の関連エピソードについてもそういうつくりなのだと思う。願いの成就と新しい旅立ちという、シリーズのまとめだから、対象年齢高めになるよな、と。

*5:これらの演出についてはネットでいろいろ指摘されているようだ。例えばここを参照→http://kanaejun.net/entries/20051021_1845.html

*6:ネタバレじゃなかったらもう少し書きたいところだけど、我慢。

*7:本当は映画を見ているのに、わざと知らない振りをして書いているのではないかと思う人がいたら、それは違うと言っておきます。本当にまだ予告編や5分版までしか見ていない。ネット記事は参照してるけど、誰もネタバレまでしてくれないし。明日はおおたかの森あたりで見る予定。予定は未定。