成年被後見人の選挙権に関する記事の追加(毎日、2009/09/02)

前回(misc., 2009-09-27)に続き選挙権関連のエントリー。知的障害のある人と少しずれるが(そしてけっこう重なるが)、成年被後見人については選挙権がないという、公職選挙法における欠格条項の話である。*1
その他、これまでの関連記事などはこちら。


本件はときどき話題にされているものの、なかなか進展しない。今年も4月22日に高鳥修一氏(前衆議院議員)が衆院厚労委員会で質問し、総務省と桝添前厚労大臣が答えている。総務省は相変わらずだが桝添前大臣はいちおう前向きだった。


本件について新規に関連記事が出たので紹介する。毎日新聞の「発信箱」で掲載されたとのことで知人から紹介いただいた。毎日の記事は早晩リンクが切れるので、その場合はキャッシュに飛んで欲しい。

キャッシュはこちらをクリック*2


なお前回の記事も掲載したので、これも以下に掲載させていただく。*3

発信箱:選挙に行きたい!=磯崎由美


 69・28%。衆院選小選挙区投票率が現行制度下で過去最高になった。この数字には、今年20歳になり初の国政選挙に臨んだN美さんの1票も含まれている。


 自閉症のN美さんはレストランの仕事が休みの日、不在者投票に行った。母(53)は娘に各候補者と政党を説明し「いいと思った名前を書くのよ」と送り出した。迷わず投票用紙に向かい大人の責任を果たした娘が、母には誇らしい。「親の私もしっかり選ばなきゃって思いました」


 知的障害者と選挙については04年に千葉県手をつなぐ育成会がアンケートしている。回答者666人中、約35%が投票に行っていた。町が選挙ムードになると投票が気になってくる人。候補者名を書く練習をしてその日を待つ人もいる。ところが現行法では相続問題などに備え法定の成年後見制度を利用すると、障害の程度や事情にかかわらず一律に選挙権を失ってしまう。


 約20年前から立候補者を招き演説会を開いている社会復帰施設・滝乃川学園(東京都国立市)では、今回も約40人が候補者らの訴えに耳を傾け、半数が投票に行った。一方で、親が高齢の人には将来のために成年後見制度をすすめざるを得ない。突然投票できなくなった人に「なぜ?」と聞かれるたびに、職員は「私たちも矛盾を感じているのに、どう説明すればいいのか」と悩むという。


 悪質な施設が判断能力の不十分な入所者を誘導し、特定の候補者に投票させるといった選挙違反も起きている。しかし事件防止を重視するあまり、政治に参加する大切な手段が奪われるのはおかしい。そもそも成年後見制度は障害者や高齢者の暮らしと権利を守るために作られたはずだ。(生活報道部)


毎日新聞 2009年9月2日 東京朝刊

記事中の2004年に行われた千葉県手をつなぐ育成会のアンケートについては、上述の関連ブログエントリー“選挙権に関するアンケート結果を再掲載(misc., 2006/11/01)”を参照のこと。


さて、現在の議論としては、「権利論としての観点」、「手続きや運用上の観点」、「能力論上の観点」などがあるように思う。

これに加えて、そもそも本邦では後見類型になり過ぎとの指摘もある。というか私もそう考えている。被保佐人であれば選挙権を失うことはない(それでも公務員職など多くの欠格条項はあるが)。


先日の研究会で、上記の「実践成年後見」No.19以降にも、法学領域からの論文が発表されていると聞いた。ネットで調べたら確かにあった。図書館に行けば取れるはずだが時間が無くて取れていない。また別エントリーとする。


実践成年後見 (No.19)

実践成年後見 (No.19)

*1:実際には今まで書き溜めていたあるいは溜まってしまったものを吐き出しているだけなので、実は別のことで慌てている今日この頃。

*2:ウィルスバスターの更新によって、このキャッシュのページ(ウェブ魚拓)が有害サイトと認識される場合があるようだ。その場合はトレンドマイクロ社の案内に従って「許可するWebサイト」に http://*.megalodon.jp/* あたりを追加されたい。もしかすると他社製品も何か引っかかるかもしれないが、同様に対処必要かも。

*3:どのエントリーも記事掲載するかどうかは悩んでいる。いまのところはあまり掲載せずリンクやキャッシュにするつもりだが、キャッシュが有害サイトと認識されすぎるようならば考えてしまう。