実例からみた身上監護の枠組みと運用(実践成年後見No.23)(その1)

標記のような原稿を書いた。他の情報も併せて記載するとこうなる。

名川勝・菅井昌恵・笠原美和子・佐々美弥子:実例からみた身上監護の枠組みと運用.実践成年後見,23,30-35,2007.

共著者の3氏はいずれも社会福祉士として多くの後見実務にも当たっている方々である。
 
掲載雑誌のの目次は以下にある。

実践成年後見No.23【特集:身上監護】

追って Amazon でも買えるようになりそうだが(No.22までなら買える)、今はまだ発行社である民事法研究会にメールかファクシミリで注文する必要がありそうだ。興味があればご購入ください。


身上監護の法学的な理論展開は、上山先生、菅先生、小賀野先生が書いている(菅さんのは英国MCA2005の身上監護的な部分の解説だろう)。各先生がどのような認識を示しているのか、とても興味がある。まだ手元に届いていないので、ちょっと待ち遠しい。

いっぽう、私たちのは実践部分ということになっているが、他の実践寄稿を拝見しつつまとめ的に書く役割も担っている。実際、他の方々の実践寄稿に共通して見受けられる特徴を抽出し整理するところから書き始めている。原稿の後半は、自分たちの主張にしているが。


以下、私たちの主張も含めて少しだけ中身を紹介する(と言いつつ短くできない)。

身上監護のあり方や範囲は、どうやら混乱しているとも聞く。誰がどこまでやって良いか分からない。人によって違う。また職種によっても認識が違う。それで少し整理するための手がかりとして今回の特集も編まれたのだろう。

もともと平成12年の民法改正で成年後見制度は福祉的な理念も含み入れてスタートしている。そこで既に民法と福祉法のオーバーラップ領域を持ち合わせているというのが私の認識。民法の枠からだけ考えていても認識に自ずから限界があるように思う。そういう話は後半に少しだけ書いた。

それから、Mental Capacity Act 2005 の Code of Practice については今までにもHPやブログで紹介しているが(→http://homepage3.nifty.com/mnagawa/#mca2005)、この英国法と Codes を読みながら影響を受けて書いた部分もある。Code of Practice は言わば、本人の意思決定を出来るだけ本人に預けておくための実践手引き書でもあるとも言える。しかしそれでも(当該事象に対して)本人に意思決定の能力がないと判断するための手順や考え方などが、シナリオ(事例)とともに示されている。後見人に相当する人はもとより、本人の介護をする人や本人と取引をする人など多くの関係者がこの Code of Practice を参照するよう勧められている。それは個々に具体的な事象なので、どちらかというと福祉畑のワーカーなどが事例検討した方が馴染みやすいようなシナリオもある(実際に Code of Practice 作成者にはそのような人も入っていたとか)。日本でも後見のとりわけ身上監護に携わる部分では、法律関係者と福祉関係者が連携しあって進めなければならないことも少なくない。ならば両者の良い橋渡しとして、Code of Practice までは行かなくとも、良いノウハウ集などを作っておくのも良いのではないかと思う。そんなことも書いた。

長くなったので、次回に続く。