英国知的障害者白書2001の改訂提案と意見募集/Valuing People Now(その2)

昨日の(その1)では、Valuing People Now の経緯や背景について示した。
本日は、目次と構成について紹介する。
 

目次

目次は次のようになっている。訳はもっと良い納め方があるかもしれないが、ひとまずこんなところで。間違っていたら教えて欲しい。

■意見募集の手順(Consultation process)
■保健大臣の序(Foreword from the Secretary of State for Health)
 
■第1部:序論ならびに本レポートの概要(Part 1: Introduction and Executive Summary)
■第2部:最優先課題(Part 2: The Big Priorities)
■第3部:より包括的な課題(Part 3: The Wider Agenda)
■第4部:最も大切なこと − 課題の推進体制(Part 4: The Biggest Priority - Making It Happen)
 
■第5部:意見募集(Part 5: The Consultation)

3つに区分された課題

Valuing People Now の本文は幾つか(13〜16)の課題に別れている。個々の課題を数え上げると以下の●に示した同水準配置の13課題となる。ただし「地域の市民としての生活(People as local citizens)」については他よりも細かくなっており、これも含めて数えると16課題となる(このことについては、後半の“各課題の構造”部分でもう一度触れる)。

これら13〜16の課題は3つに区分されている。「第2部:最優先課題」「第3部:より包括的な課題」「第4部:課題の推進体制」である。


「第2部:最優先課題」とされている課題は、以下の4点。

●個人の尊重(Personalisation)
●日中(および夜間、週末)の活動(What people do during the day - and evenings and weekends)
●よりよい健康(Better health)
●住居利用の改善(Access to housing)

これらの課題は(その1)でも紹介した検証過程('Valuing People Now' page 9, Fig.1)の中でも満足度が低かった項目にほぼ一致しているように思われる。つまり、検証の結果、より重点的に取り組むべきとされた項目が優先課題とされたのだろう。


これに続き「第3部:より包括的な課題」には、次の項目があがっている。

●アドボカシーと権利(Advocacy and rights)
●家族との関係(Pertnership with families)
●すべての人とインクルーシブであること(Including everyone)
●地域の市民としての生活(People as local citizens)
●成人への適切な移行(Transition to adulthood)
●働く環境の改善(Improving the workforce)

最優先とはされないものの、引き続き取り組むべき課題がここに挙げられているということではないか。


そして「第4部:課題の推進体制」には次の3課題が含まれる。

●地方ならびに全国でのリーダーシップと支援のあり方(Local and National leadership and support)
●よりよいコミッショニング(Better commissioning)
●進捗検証のために(Getting better at checking how we are doing)

上記の課題を施策として進めていくのは何が大切かという観点からここに課題として組み込んだのだろう。(余談だが、私も柏市の障害者福祉計画で推進体制セクションに幾つかの取り組みを入れて、きちんと施策が進められるように努力したことがある。というか、この部分をけっこう気にかけた。しかしそれも後からなし崩しになった気がする…)


なお、子どもについては別に計画が立てられているため、Valuing People Now では取り扱わない。留意されたい。

各課題の構造

さて全体の構成を確認したところで、課題の内部を見ていく。各課題は次の5項目から記載されている。

・大見出し(The Big Headlines)
・現状(Where Are We Now?)
・次の目標(The Next Steps)
・すべきこと(Action Summary)
・検証・評価点(The Vision For Three Years From Now)

「大見出し」には、たぶんその課題セクションに書かれていることのポイントが示されている(ちゃんと本文まで読み込んでいないので胸を張って言えない)。「検証・評価点」では、(3年後は)ここが違っているだろう(This will be different...)との観点およびその設定理由が表形式で記載されている。私たちはこの検証点が実際に達成され実現されているかどうかを、3年後に見ることになる。*1


ところで、ほぼすべての課題はこのようになっているのだが、一部分だけ少し異なっている。もっとも注目されるのは「地域の市民としての生活(People as local citizens)」だろう。「大見出し」は冒頭に掲げられているのだが、他の要素(現状、次の目標、すべきこと、検証・評価点)はさらに下位の4項目ごとに示されているのである。つまりこの要素がぜんぶそろっているものを課題と考えるならば、課題数は13ではなく16になる。
その下位項目を以下に示す。
 ・Hate Crime
 ・Transport
 ・Relationships
 ・Parents with a Learning Disability


以上は、第1部の「序論ならびに本レポートの概要」を読めばだいたいわかる。第2部〜第4部は各課題の記載だが、私はまだ読んでいない(parents with learning disability だけは読んだ)。各位が関心のある箇所について確認し、お教えいただければ有り難い。いただいた報告は拙ブログほかで紹介し、共有できるようにしたい。


次回(その3)(その4)では、一例として 12.4 Parents with Learning Disability と 12.4 Hate Crime の部分について紹介する。先に述べたように、いずれも「地域の市民としての生活(People as local citizens)」の下位項目として構成されているが、課題としての要素を揃えている項目である。
なぜこの2つを取り上げるのかといえば、私の個人的興味のもっとも強い部分がこの2点だからに他ならない。

*1:easy-read版ではこれらがわかりやすく簡潔に示されている。「良かったところ」(Good news)と「変わらないといけないところ」(Things still to change)が併置されている。前者にはサムズアップした人の写真が、後者にはサムズダウンして×点の絵を持った人の写真が付いている。