Valuing People Now(その3)/知的障害がある親の支援に関する課題

Valuing People Now について紹介してきた3回目。
(その1)では経緯と背景を、(その2)では目次と構成を書いた。

本記事では、この報告書の中で知的障害がある親の課題がどのように記載されているかを確認する。
 
知的障害のある親(parents with learning disability)についての記載がある箇所は、まず要約(executive summary)のセクション2.3.4(p14)の4行と、本文のセクション12.4(p57-59)の約2ページ分である。
(その2)で示したように、Wider Agenda の課題「地域の市民としての生活(People as local citizens)」の下位項目という位置づけではあるが、他の課題と同様に“現状”“次の目標”“すべきこと”“検証・評価点”の要素で構成されているため、やはり1人前の課題としての重要性を持っていると言えるのかもしれない。
(そうでなかったとしても、この問題が取り上げられているだけでも日本では考えられないことなのだが。)


親側の支援と子どもの支援を如何に協調的にまとめていくかが重要とされる。しかし現在は現在は両者のサービスの狭間に落ちているとの認識が Valuing People Now でも示されている。そして適切なサービスが提供されていないことによって、子どもが保護プログラムに移行する(親から引き離される)リスクが必要以上に(disproportionate)上がっているとしている。


そこで次なるステップとしては、保健省(DH)と教育技能省(DfES)(現児童・学校・家庭省(DCFS))がまとめた「実践ガイド(Good Practice Guidance)」ならびにSCIE(Social Care Institute for Excellence)のまとめたリソースガイドを活用するとともに、この趣旨に則って国も地方当局も施策を充実することが必要であると指摘されている。

知的障害がある親の子育て支援者向け実践ガイド(英国)(misc., 2007-12-18)
知的障害がある親の子育て支援者向け実践ガイド(英国)(その2)(misc., 2007-12-18)


そしてこれらの検証・評価を行う観点としては、より多くの子どもと親が適切な支援を受けること、そしてその結果として、子どもが保護環境に置く指示の割合が減ることを挙げている。また子どもと親の保健・教育・福祉領域の諸サービスが、互いに協力して彼らの個別ニーズに応えるようになったかどうかも観点として指摘されている。


次回(その4)では、同じく課題の例として、知的障害のある人に対するヘイト・クライム(hate crime)を取り上げる。


(参考)
知的障害のある親の子育て全般については、下記サイト参照。
知的障害のある親の子育て支援(mnagawa's HP)