イヴの時間 第1回配信

吉浦康裕監督、スタジオ六花の「イヴの時間」第1回がYahoo動画にて配信された*1


視聴環境を選ぶのは仕方がないけど、最もよく使う機種で見られなかったため少し苦労した。今後はこのような15分の作品を2ヶ月ごとに配信するとのこと。今回のファーストシーズンは全6回予定。


「ペイル・コクーン」に同梱されている「水のコトバ」という作品と似た視点から、その舞台と同じくやはり喫茶店が見下ろされたりする*2。私は「水のコトバ」の面白さに惹かれてここに至ったので、それは少し楽しい。演出の仕方も当然ながら似ているところがあって、ああ、この人のスタイルなのだなと思う。

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またそこでもネタになったアシモフロボット三原則が、今回も引き合いに出される。彼のインタビューでも語られているが、アシモフハインラインをベースにするのが好きなんだね>この人


その辺の、人間とアンドロイドとの付き合い方がテーマとなって、哀しいようなおかしいような物語が展開されていくのだろう。昔から良くあるSF話ではあるが、それを彼なりの世界で現代のような人たちの間に置くとどうなるのか、私たちはその時間を共にすることになる。少なくとも私は、後半のアキコ/Akikoのエピソードに胸を痛くした*3。この世界に生きているのならば、ドリ系と呼ばれることになったのだろうか>私。
しかしそもそもこのような外見と能力と反応系を仕様として設計しておいて、道具として扱えという設定がどうかとは思うのだが、その辺にツッコミ出すとなかなか難しい議論に突入することになりそうで。なんだかアトムたちの夢が懐かしい。ついでに言うと、「ヨコハマ買い出し紀行」のような付き合い方がこの先にあるのかなー、なんて思ってもみたり。*4


それとどうも気になるのが、アンドロイドのステイタス表示部分。物語中では“リング”と呼ばれている。頭上で円環状に回転しており、プロンプトの役割も果たしているのかもしれない。動作・表情や音声によるモニタ出力ではまかなわれない情報や、常時提示をすべき事項をここに出しておくのだろう。そしてこれが頭上に提示されていることが、ほぼ唯一、人間と外見上の識別を可能とするということらしい(だから喫茶店イヴの時間”でこのリングが無いため人間とアンドロイド(ロボット)との区別が出来なくなっている)。
それにしても、誰でも指摘すると思うのだが、あれって天使の輪のようだ。今後このことが何らかのシンボリックな意味合いを持つことになるんだろうか。ひょっとすると物語の展開上は明示されず、隠されたメッセージとして機能するのかもしれない? このへんはまったくの視聴者的憶測。それとも単におもしろさを狙ったギミック? あるいはインターフェイスを真面目に考えた末に導かれたデザイン?


作者はこの問題をドラスティックな展開ではなく、またハードSF的に進めるのでもなく、むしろ日常の揺らぎというか半身ずらすようなエピソードを重ねながら描くらしい。公式サイトでそんな話が書いてある。またBGMもそれを示唆しているような気も。
となると、「水のコトバ」に近い感じに行くんだね。言葉の積み重ねや視点移動なども楽しめそうだ。


次回を待とう。

※参考

*1:ほんとは前回の書き込みに続いて後見法学会の改正提言についてコメントしたいんだけど、時間がない

*2:店の配置や作りだけではなく、喫茶店イーゼルの置き方と、そこにあるメッセージが意味を持ってくることなども

*3:ついでに言えば、サミィ/Sammy他のアンドロイドが雨に濡れたままというのも。傘に近いという演出なんだろうかね。でも廊下や部屋だって塗れるし彼らの着ている服も劣化するから、早めに拭かせた方が良いと思うんだが。“拭く、自分”などとコマンド出すのか?

*4:そういえば、先端島亡念のザムド)からも、この買い出し紀行の世界からもヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルってよく見える。あれは“風をはらんだヨットの帆のかたち”ということらしいのだが、しかしなんというか、ミカンの房形っていうほうがわかりやすいか? かつてあった建物跡、としては使われやすいってことのようだ