医療・福祉領域での消費者

日本消費者教育学会第27回大会があった。私は午後の発表だったのに、勘違いして午前の部と思いこんで朝7時前の電車に駆け込んだ。まあ遅刻するよりは良かったけど。
 
日本消費者教育学会
第27回大会(2007/10/13〜14、国民生活センター相模原研修施設)
 
それで朝の学会会場でプログラムを確認して、あれ、俺の出番って午後なんだと気づく。そういえばプログラム確認もろくにしていなかったんだと、それにも気づく。
どこかの分科会に入って勉強しようかなと思ったが、駅前に戻ってファミレスで仕事をして時間を潰した。
昼過ぎに再び会場へ。今度は間違いなく発表のブロック。
 
私の分科会は前半と後半でテーマが違っていた。私を含む前半戦は「医療・福祉と消費者教育」のような括りらしい。司会者(小野先生、知人)によれば、こういうのは当学会ではまだ多くないとのこと。そういえば一昨年前の大会でも、私たちともう一つだけの発表だったような気がする。いずれはこういう発表だけで分科会ひとつを組めるようになっていくのだろうか。

こういう発表だった。

■浅川典子(埼玉医科大学
介護保険制度のもとでの契約にもとづく介護サービス利用支援に関する研究−サービス導入時に介護支援専門員の果たしている役割−
 
■名川勝(筑波大学)・堀江まゆみ(白梅学園短期大学
知的障害者等の消費トラブルに関する研究(3)支援者向け研修プログラムの開発
 
■田村久美(川崎医療福祉大学)・水谷節子(ノートルダム清心女子大学
「医療消費者」の変遷からみた消費者研究への展望


私たちのは他でもしゃべっている話だし置いておくとして、興味を引かれたのは田村・水谷発表だった。時間が経ったので詳しい話は忘れたが、「医療サービスに対する消費者意識の必要性」「自立した医療消費者」の概念がパワーポイントを交えて提示されていった。
 
討議の時間、私の質問は2点有り、ひとつは忘れた。ひとつは確か“医療領域では医師と患者の関係において、どうしてもパターナリスティックな部分は払拭されきれないのだと思うが、そのような中にあって消費者意識というのは他の市場関係にある消費者意識とはどのように違うと思われますか?”のようなことだったと記憶している。

パターナリズムというのは悪い関係の代名詞みたいに言われることもあるが、中身をいろいろ見ていくと、すべてを否定することもできない(もちろんダメなものはダメですが)。そういう話についてはたとえば立岩さんの arsvi.com の中で制作されている「パターナリズム」の項目を少し調べると出てくるかもしれない。たとえば上の方にある、樋澤さんの2003年の論文とか。


パターナリズム paternalism(arsvi.com)
樋澤吉彦:「自己決定」を支える「パターナリズム」についての一考察 ─「倫理綱領」改訂議論に対する「違和感」から─.精神保健福祉, 34(1), 62-69, 2003.


それで、医療場面でもある程度無くならないのかもしれないなあという感覚があって*1、しかしそういう場面においても消費者意識を持つってどうなるんだろうとの疑問を持ったわけだ。発表者はどうもパターナリズム=悪との理解をされたらしく(少なくとも私の質問がそういう意図だったと思われたらしく)、改善努力を続けるべき、のような返事だったかと思う(間違っていたらご指摘ください)。私はあまり突っ込まず引いた。

すると次の質問者がさらに展開をする。
「医療消費者が自立しなさいって言っても、とても苦しいときにそんなこと言ってられないんじゃないですか?」

ちょっと会場がホットになった感覚があって、面白かった。分科会終了後も彼らは丁寧に話し合いをしていたようだ。
 
私はあまり詳しくないけれど、積極的に患者であることの立場から発言し改善をしている人たちや運動があるように思う*2。それらも含め、何らかのかたちでの医療消費者という概念はできるんだと私も思っている。しかしではどんなふうに作ればよいのか、またその消費者であることが現れ出るのは診察室でなのか、別の場所でなのか、その際に何が主張されるのか、のようなことについてはこれから詳しく検討されるようになるのかもしれない。少なくとも今回はその入り口を見せてもらったわけで、その先についてはどうぞ頑張ってくださいと期待することになる。

介護については既にサービス消費者としての利用者という概念はデビューしている。いわゆる消費者生活センターなどでも介護関係の相談件数はある。現場も含めてどう対応するかはこれからなのかもしれない。

未消化ですいませんが、こんなところで。だーっと書き下ろした。
 

*1:もしかするとぜんぜんパターナリスティックでない関係というのもありうるのかもしれませんが。もしかしたらなだいなだの「おっちょこちょ医 (1981年)」とか?

*2:さらに現在起こっている医療トラブルの多くが、医療消費者問題として考えることのできるものでしょうし