イヴの時間act04:NAMELESS /ナギのことと、なぜカトランの名前データは削除されずに残っていたのかとか

5月1日。act04公開なので、アクセスして見る。
次回は7月、9月に予定されている。

私のやるべきことに片が付いたかっていうとそんなことはぜんぜん無いんだが。GWの仕事になりそう。


これまでの関連記事はこちら。


act04についてはまだ視聴回数が少ないので変更はあり得るけど、うーん、今回はあまり書くことが無いかなーという印象。*1
現行機のようなファジーさが無いロボット/アンドロイドだとどうなるんだろうということを、旧型の不法投棄ロボット(ハウスロイド)を通じて示すエピソード。主人公と不法投棄ロボットとのコミカルなやりとりはちょっとデフォルメされていて(それはそれで作者らしいのだけれど)、でもこういうスジにはならんでしょうほんとは、との感じが残る。

むろん、ナギの示す思いはこちらにもぐさっと刺さってくるんだけど。*2


しかしなんでこれも倫理委員会の仕事なんだかなあ。おそらくは“浮浪ロボット”と呼ばれる、何らかの原因で管理を外れたロボットが、基本的な行動原則を逸脱する行為を行うことが(人間に危害を与える等のおそれがあるために)非倫理的と言われるのだ。ロボットの行動原則を倫理とするならば、まあ“浮浪ロボット”は「非倫理的」となるのも当然ではあるのだが、でもなんだか勝手だなあと、素朴に思う。
翻って、そもそもこの社会のアンドロイドであっても、まだ彼らを倫理の主体者とするまでには至っていないだろう。そこが無理があるんだけど、でも本作の作者はこれを敢えて倫理という言葉で取り出すことによって、いろいろ話を動かしてみたいわけで。


ナギは人間かアンドロイド/ロボットかについては今のところ明かされていない。
もし人間ならば、例えば倫理委員会に関わりがあったけど、その活動に反発を覚えてこの店を始めたって設定になるのかなあ、なんて思っていた。かなり素直な推測ならば。もちろん、委員会とは無関係という話でもかまわないしそれもじゅうぶん有りだ。
でも今回、もしかしてアンドロイドなのだろうかと示唆したかにも受け取れるカットが一瞬だけあった。マサキがナギをロボットから引き離そうとする場面。無抵抗に離され振り返ったナギの哀しそうな表情。それと重なる、ロボット様のモノトーンの絵。
ただそのイメージがナギを表すとすると、その後のマサキの気勢を削がれたリアクションに繋がらない(説明が付かない)ので、ここは簡単に、不法投棄ロボットの姿とナギの哀しそうな表情が重なって、マサキにも“不法投棄ロボットの哀しさ”が一瞬映し込まれたのだと考えたほうが良いのかもしれない。ロボットには心が無いと主張してぞんざいに扱う姿勢を強行しようとしていたマサキが、これを否定する感情に囚われてしまったことで、気勢を削がれた(しらけた)ということなのかもしれない。
現在のマサキはリクオやナギに感化されて次第に認識と姿勢が揺らいでいるところだから、余計に自己をしっかりさせるためにロボットに無感情に対したかったのだろう。だってそうじゃないとこの社会では“ドリ系”ってラベリングされちゃうからね。
なんだか差別の拡大と維持のパタンをみるようだ。


ところで今回の不法投棄ロボット nameless/カトラン は様々な個人情報を削除されていたにもかかわらず、自分の名前を付けてくれた子どもが自分の名前(=カトラン)を呼ぶ場面の画像は残っていた。ただしその子の顔も固有の名前もノイズでマスクされていたので、所有者(=子どもの親か)はこの画像の存在に気づいて手を加えたのだと考えられる。しかしそれなのに画像が残ってるってのもわかりにくい話だな。
ここはおそらく、「個人情報削除プログラム」を自動で走らせたと考えるところか。それはテキストデータのみならず、音声や画像データにも及ぶ仕様になっていた。ところが何らかの理由によって十分な削除が行えず残ってしまった。★ここんところ、脚注参照→*3
あるいはこのロボットが事前に個人情報をノイズで隠す処理をしたことにより、「個人情報削除プログラム」の手に及ばなかったのだろうか。うわ、それはすごいや。


もうひとつ考えられるのはこういう話。
ロボットが子どもから付けられた“カトラン”という名前ならびにこれを根拠づけるデータは、このロボットの行為体系を統制するために非常に重要なデータであったために、固有機体コード(シリアルナンバーなど)と同格の重要性を与えられた。子どもの世話をするロボットであるから、子どもから与えられた呼び名は損なうわけにいかないデータだった。そのため、カレ=カトランが指示を実行し続ける過程で、いつしかその関連データはロボットの記憶体系の中でBIOSプログラムと同じくらい?深い場所に特殊な形で刻み込まれることとなった。結果として、一般的な「個人情報削除プログラム」にも追い切れなかった。とか。
ならばそのロボットが名前を呼ばれることを大切にしていた理由も分かるし、もういちど自分の名前を呼び関わってくれる人を求めていたこともカレの行動規範に沿うかもしれない。すなわち、自己を保持するとともに、自分のマスター(=子ども)の認識と支持+指示を求めていたのだ。


でもね。こうやって自己のアイデンティティとそれを支持する他者を重要であると位置づける志向性って、私たちのあいだでは心とか呼ぶんじゃないだろうか。



後は些末なこと。

そういえばリクオの父親がアンドロイド製作会社の開発者だかクレーム対応担当者だかっていう設定は、今回初めて出てたんだっけ?

それからもうひとつ、マサキに話しかけていたクラスメイトの女子生徒が今回のラストにもちょっと出ていたけど、それは次回以降に繋がっていくんでしょうか。とりあえず、アンドロイドとの接点が一般化した際の反応を代表するような動き方だったけど。よくわからん。


次回はチエちゃんのお守り役シメイさんの話か。*4

*1:と言いつつ書いたらけっこうな量になってしまった。

*2:泣けたなあっていうか。「夏のあらし!」第4回であらし(嵐山小夜子)が階段踊り場で振り返るシーンよりも個人的には良かったかなと。

*3:書いてから見直してみて思ったんだけど、所有者=親は顔データとか削除したからこれで良いやと思ったと考えるのがいちばん素直だし、たぶん制作者側としてもそう読んでくれることを期待していたんだろうと思われる。そこを私は敢えて“これじゃ十分削除されておらず、そのためにカトランがアイデンティティを求める行動に駆られた”と考えて書き進めてみたものである。不十分な個人情報削除の後に不法投棄されたロボットは、いずれも浮浪してしまうのだろうか? そのへんの設定次第で読み込み方は違ってくるのではないか。いやあ、私の勘違いってことも大いにあり得るんですが。

*4:サミィもっと見たいなあ。アキコも。