「夏のあらし!」アニメ版はまだ魅力の半分までしか出してないから、後半も見続けよう、な話。

最初に断っておくが、私は「夏のあらし!」が好きだ。今期(2009春)で言えば、「東のエデン」「けいおん!」よりも買っているかもしれない*1。それだけに、第5回放映分を見てなんだか文句を吐き出しておきたくなったということで書いている。まあ、視聴者なんぞそんなもんだ。
第6回以降に期待。*2

(この段落ネタバレというか設定など紹介)


ヒロインのあらし(嵐山小夜子)やカヤを初めとする女性4名は、横浜大空襲時の爆風だか何だかが原因で(半分)しんでしまったようなのだが、同時に“存在エネルギー”のようなものを、“通じた”誰かから得ることによって夏の間だけ生身の人間のように振る舞うと同時に、タイムリープの能力も得ることとなる。*3
そうした設定に基づき、主人公たちが過去と現在を結んで、人の思いや気持ちを大切にしたり、あるいは遊んだりする話がこの作品の原作。
原作コミックス第5巻で主人公が「命短し 恋せよ乙女 紅き唇 褪せぬ間に」*4とのフレーズを語るが、ある意味象徴的かもしれない。昭和を舞台のひとつとすることによって、はからずも*5戦前の人々の気風などと現代を対比させることにもなっている。


(物語と設定紹介おわり)


夏のあらし!」アニメも13回予定中、5回まで来た。4回までで原作第1巻くらいを消化し、物語は渦中に入っていくのかと思いきや、今回はinterlude的な遊びの回だった。もちろんオリジナル。萌えキャラとか期待していた人はそれで良かったんだろうけどね*6。だって上賀茂潤の“女装”とか、あらしやカヤのメイド服とか、原作読んでいる人ならたぶん見てみたいと思ってただろうから、そういう意味ではGW記念のサービス200%企画こりゃ保存版でしょー、だったのだと思う。


やよゐと加奈子の漫画タイトル当てクイズもアバンとBパート冒頭、そして恒例のCパートと3回あった。相変わらずだいたい分かってしまうのは、やはり昭和の少年向けってことなんだろう。*7
サブタイトルや挿入歌も昭和の歌謡曲を使っていて楽しい。ってことは、これっておじさんへのノスタルジーが売りなわけ? いやいや、それだけじゃ商売にならんだろうがなあ。*8


まあそれはそれで楽しませていただいたとして、でも私は正直悲しかった。だってこの物語はコメディの味と、登場人物の“思い”の両者が、重すぎず軽すぎず(これが大事)提示・進行することで魅力的になっているのだから*9。例えば第4回のしっとりとしたエピソードなどは、前半の中心ネタのひとつだったかもしれない。後半ではカヤのエピソードもやるんだろうな、きっと。そうじゃないと、もうバタバタとうるさいだけの話になってしまうんだから。第5回以降はちゃんと進めるのだろうか。回収不能に散らかってしまわないかとちょっと心配。「さよなら絶望先生」とは違うんだよ。そのへんのどっちつかずの感じが、良くないんじゃないのかな。


どこかで誰かが第1回放映分を見て継続視聴即刻打ち切りと書いていた。そういうブログが複数あった。そうかもね。私もあれだけだったら切っていた。第1回のネタは原作でいうと途中挿話的な話だ(第18話、第3巻所収)。ただ主要登場人物が出そろっていること、タイムリープの仕掛けなどの諸設定を一気に説明できるので、最初に置いたってことなんだろうか。でも視聴者はたぶん、それだけの話なのだと思ってしまったのではないか。加えて監督とシャフトのこれまでの演出傾向や、OPの遊び*10が自己満足的にはしゃいでいるふうに見えたのではないか。
これから順当に進めば当然ながら戦時下の横浜と空襲が加わってくる。これの演出が今度は対称的に過剰に重いと、たぶん私は演出のあざとさを感じることになる*11。うまくまとめて主人公たちの思いを描いて欲しい。成功すれば、前半のはしゃいだふうも十分回収できると思うから。*12


ということで、今後この番組を見続けようかどうしようか迷っているあなた、どうぞ継続視聴してみてくださいね。


次回エントリーは、原作である漫画版の「夏のあらし!」について。

*1:比較対象が対象なだけに、私の思い入れの深さが分かろうってものだ。でもこういう嗜好の人間はマイナーなんだろうなあ。

*2:今回のエントリーを皮切りとする今後3回ほどの書き込みが、原稿書きの勢いに任せた執筆エネルギーの無駄遣いであることはいちおう自覚しつつ言っておく。

*3:作中で彼らは自分たちのことを地縛霊みたいに理解しているらしいことが示されている。

*4:表記は原作コミックスに従う。第26話、第5巻29ページ

*5:はかったのかもしれないが、メインテーマじゃなかったろうな、たぶん

*6:でも私はストーリーや設定とか世界観で見る人間なんだよね−。

*7:ほかのブログを見ると、わからない人もいるらしいから。

*8:遊びと言えば、出てきたネズミがガンバを彷彿とさせるデザインだったのも誰かの遊びなのかな。ゴキブリのほうも何からしい。私は分からんなあ。

*9:比重は空襲にあるのではない。彼女らの思いにあると私は考えている。

*10:これについては稿を改めて書きたい。

*11:エヴァみたいに、というと変かな

*12:もし軽いだけの話で13回行くんだったら、まったく能力無しの下手な作品だと思うしかない。